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企業組織における調達の位置づけと組織形態の考え方
ラインとスタッフの概念
企業組織は、大きく「ライン」と「スタッフ」に分けて考えられます。
- ライン部門:業務の遂行に直接関わり、「プロフィット(利益)」に対する責任を負います。例:製造部門、営業部門
- スタッフ部門:ラインの業務を支援し、専門性を基盤にしたサポートを提供します。例:経理部門、人事部門、法務部門
※調達部門は企業によって、ラインに属する場合とスタッフに属する場合があります。
プロフィットセンターとコストセンター
企業の部門は、以下の2種類に分類されます。
- プロフィットセンター:利益(プロフィット)に責任を持つ部門
- コストセンター:コストのみを管理する部門
調達部門は、一般的に「コストセンター」として位置づけられます。
企業全体の組織形態
企業の組織形態には以下のような種類があります。
- 職能別組織:営業、製造、人事、経理、調達など、機能ごとに編成
- 事業部別組織:製品別、顧客別、地域別などに分けた利益責任を持つ事業単位
- マトリックス組織:職能別組織と事業部別組織の統合。二重報告体制をとる
- 臨時編成組織・委員会:特定の課題に対して横断的に編成される
- カンパニー制組織:より独立性の高い事業部制の発展形
- 社内ベンチャー:リスクの高い新規事業を特別に扱う組織
調達部門の役割と組織的な位置づけ
調達品を扱う部門
調達対象は、以下のように多岐にわたります。
- 製品の材料・部品(直接材)
- 設備、消耗品、サービス(間接材)
※すべての調達品を調達部門が担当しているとは限らず、他部門が扱っているケースもあります。どの部門が何を担当しているかを把握することが重要です。
欧米企業を中心に、キャッシュのアウトフローすべてを調達部門がカバーする体制が広がりつつあります。
調達組織の3つのタイプ
- 事業横断組織型
全社横断のスタッフ部門として、複数事業体を横断して調達サービスを提供 - 事業ライン組織型
事業部や工場など、個別のライン組織の一部門として調達を担当 - 事業横断・ライン混合型
例:グローバル調達やIT調達は横断組織、それ以外は各事業ラインが担当
企業の業種や内部体制に応じて、柔軟に最適な体制をとることが求められます。
調達部門のビジネスプロセス上の役割
調達部門の役割を明確にする際の重要ポイント:
- 「サプライヤー決定権」と「調達価格決定権」は、調達部門に属させるべき
- 内部統制の観点から、不適切な処理を防止するため、複数組織による役割分担が重要
ライン機能の具体的分担事例
調達業務におけるライン機能の分担例は以下のとおりです。
- 購買(カタログ購入) と 製造委託
- 試作段階専門 と 量産段階専門
- 直接材調達 と 間接材調達
- 国内サプライヤー担当 と 海外サプライヤー担当
各企業の状況に応じて、柔軟に分担することが重要です。
集中化と分散化の検討課題
調達業務において、「集中化」と「分散化」は重要な設計テーマです。
集中化の方向性:
- 同一品目のとりまとめ
- 類似品のとりまとめ
- サプライヤーの集約
- 専門スキルの活用(例:輸入品調達)
- 設計段階での標準化と集約
強み | 弱み | |
集中 | ボリュームの活用 | きめ細かい対応がしにくい スピードが鈍い |
分散 | きめ細かい対応 速いスピード | ボリュームがいかせない |
国際調達事務所(IPO:International Purchasing Office)
IPOは調達部門が中心となって運営する海外拠点の調達組織です。
IPOの主なミッション
- 現地調達品のトータルコスト最適化
- サプライヤーとの良好な関係構築
- サプライヤーや市場に関する情報提供
IPOの課題
- 設置・運用コストの回収
- 費用対効果の十分な検討が必要
まとめ
調達部門は企業組織の中で重要な役割を果たし、ライン・スタッフ、業務分担、集中化・分散化といった観点から組織設計を行う必要があります。自社の業態や事業特性に応じて、最適な調達体制を構築することが競争力強化に直結します。
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